〜 穿孔性腹膜炎と外科医不足 〜(2006/06/01)

 二月の休日、腹痛を訴えて七十過ぎの女性が来院しました。診察すると下腹部に圧痛があり炎症症状を認め、急性腹膜炎を来し手術が必要と判断し、病院へ紹介しましたが、休日のため直接外科医に電話し手術を依頼しました。手術の結果、大腸が穿孔(孔があくこと)し糞便が漏れ腹膜炎を起こしていました。穿孔部を含めて腸を切除して一命を取りとめました。
 このように、胃腸や内臓が破れ内容物が腹腔内に漏れると穿孔性腹膜炎を生じ、一刻も早い手術的治療が必要です。
 穿孔性腹膜炎を来す代表的な病気に、最近は少なくなりましたが胃潰瘍や十二指腸潰瘍の穿孔があります。以前は急性虫垂炎(盲腸炎)が進行し破れて膿が腹腔内に漏れる腹膜炎がよくみられました。代わって近年は、高齢者の増加に伴い結腸憩室やがんの穿孔が多くなりました。また腹部の打撲、誤って呑み込んだ魚骨や異物が腸を破ることもあります。また胆のう炎の進行による胆のう穿孔を来す事もあります。
 最近、産業医や小児科医が少なくなり社会問題となっていますが、外科医を志望する若い医師も少なくなり近い将来手術を思うように受けられなくなる可能性があります。
 長時間の労働、緊急手術、手術と術後にも細心の注意を払わねばならず、インフォームドコンセント(手術や処置についての説明と承諾)等、外科医は大変忙しく息ぬく間もありません。もし事故があれば犯罪者のようにマスコミ報道され訴訟にもなります。このような厳しい条件の中で外科医として使命感に燃えて日夜頑張る勤務医に私は敬意を表しています。
 本来、社会に必要とされ、やりがいのある仕事ですが、何故若い医師に敬遠されるのか、外科医不足にならないうちに社会全体で考えてみる必要があるのではないでしょうか。


吉田医院・吉田 翼

一覧に戻る

Copyright (C) 2001-2006 Nakatado gun & Zentsuji city Medical Association. All Rights Reserved