発熱 〜その他の状況をよく見て〜(2006/09/01)

 小児科の外来を受診するときの主訴で最も多いものの一つが発熱です。昼間はそれ程でなくても、夜遅くに子どもが高熱であることがわかると親の心配は倍増します。発熱とは、体温が正常以上に上昇することですが、正常体温は年齢や季節によって異なりますし、一日の中でも午前より午後の方が高くなります。興奮したり、運動した時、熱い物を飲食した後も体温は上昇します。個人差もありますが、腋窩(わきのした)温度は36.5度、プラスマイナス0.3度が一応正常とされ、38.0度を超えると明らかに発熱とすべきでしょう。肛門検温では腋窩部よりも0.5度高いのです。従って、子どもの平常体温を知っておくことが必要です。発熱の原因は殆んどの場合感染症です。微生物が身体に感染した結果、熱が出るのです。その微生物を大きく分けると、日本のような先進国では細菌とウイルスの感染が圧倒的に多いのです。有名な病気、例えば麻疹、水痘、おたふく風邪、風疹、手足口病、これらはすべてウイルスが原因です。ウイルスの種類が異なるので症状が異なるわけです。ウイルス感染に共通なことは、いずれも子ども自身が持っている免疫能力で治っていくということです。ウイルスに効果のある薬もいくつかはありますが、本来的には自分の身体が治していくことです。一方、細菌の感染の場合は抗菌剤(抗生物質)が有効です。ウイルスには抗菌剤は無効であることは意外と知られていません。発熱で大切なことは、体温が高いことが重症度を示すわけではないことです。意識状態、食欲、機嫌の良否などを観察し、解熱剤、氷枕などの対症療法を行います。そうすると発熱だけで、時間外や夜間に慌てて病院へ出かける必要は殆んどないと言ってよいでしょう。

香川小児病院・濱口 武士


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