妊娠と甲状腺疾患(2009/06/01)
妊娠中、母体への種々の投薬は胎児への影響を考え安易な投薬はひかえます。 しかし、甲状腺疾患には投薬を継続しなければならない疾患、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)と橋本病(甲状腺機能低下症)があります。 甲状腺機能が亢進または低下状態にあると、流産あるいは胎児の発達不全により妊娠が継続できません。甲状腺ホルモンは妊娠初期の胎児の成長発達、特に脳神経系発達に重要な役割を果たしていると考えられています。 このため、母体の甲状腺機能は軽度亢進状態にあるのがベストと推測されています。 まず、バセドウ病と妊娠について。 バセドウ病の治療には、メチマゾール(MMI)とプロピルサイオウラシル(PTU)の2種類があります。妊娠中のMMI投与は1万人に3人の割合で皮膚欠損の可能性の報告を認めますが、この因果関係ははっきりしません。できれば妊娠中は、MMI→PTUへ変更してのコントロールを勧めます。PTUは胎児に対して重篤な副作用報告は認めていません。 妊娠が進むにつれ母体は生理的免疫抑制作用により甲状腺剤の減量中止が可能となります。しかし分娩後のバセドウ病は、悪化再燃し出産後3〜6か月後投薬量の増量が必要となります。 次に橋本病と妊娠に関しては、甲状腺ホルモン(T4製剤)の十分な補充が必要と考えられています。 このように、甲状腺疾患には投薬による副作用を考えながら妊娠中も投薬を継続し、加療しなければならない疾患がある事を知っていただければと思います。
中島医院 中島雄作 |
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