夏場の怖い皮膚感染症について(2012/06/06)

 

夏場に多い皮膚疾患には、湿疹、虫刺され、水虫などがあります。しかし、これらの病気が命取りになる場合は、ほぼないと思われます(蜂刺しによるアナフィラキシーショック等による特殊な場合を除いて)。今回は、稀な病気ではありますが夏季に多く、発症すると死に至る危険の高い(しかしこの病気を知っていることで予防・対策が可能な)ビブリオ・バルニフィカス感染症を紹介します。昨年当院で経験し、救命することができました。

ビブリオ・バルニフィカスは、夏季に沿岸の海水中にいる細菌です。糖尿病、肝臓疾患(アルコール多飲者含む)、免疫力の低下などの基礎疾患のある方、あるいは貧血で鉄剤を内服中の方などが、この菌に汚染された魚介類の生食を介して感染すると重篤な症状を起こすことがあります。また釣り針や魚のえら・ひれの刺入から菌が侵入して感染することも知られています。

この細菌が血中に入って全身に拡がった場合の致死率は、50〜70%と高く、大変恐ろしい感染症です。(健康な人では、汚染された食品を食べても嘔吐・下痢・腹痛などの症状で軽快します。また、発症した人から次の人にうつることはありません。)

症状は、感染後数時間から48時間以内に発熱、悪寒と皮ふ(おもに下肢)に激しい痛み、発赤、水疱を伴って発症します。その後、血圧低下などがあらわれます。このような症状が出た場合には、すぐに医療機関を受診することをお勧めします。

予防として、上記のようなハイリスクの人は、この細菌が発生しやすい季節(5〜11月、特に7〜9月に多い)に、刺身など魚介類の生食を避けることが最も重要です。もし夏場に魚介類を食べるときには、よく加熱することが大切です。また、調理する人は、手や指からの感染を防ぐために、傷があるときは生の魚介類の調理を避けてください。

                                            

                                                                                          善通寺病院 皮膚科 廣瀬 憲志


一覧に戻る

Copyright (C) 2001-2006 Nakatado gun & Zentsuji city Medical Association. All Rights Reserved