心房細動って言われたら、脳梗塞が心配!だけど治療をすれば恐くない(2012/12/01)

  

  心房細動とは、脈が乱れて頻脈になりやすい不整脈です。心房細動が発作的に出現する「発作性心房細動」では動悸を自覚することが多いですが、慢性化した「慢性心房細動」では無症状のことも多く、健診などで見つかることもよくあります。心房細動は弁膜症に合併しやすいですが、最近は心臓病のない高血圧や高齢の方で心房細動が増えており、70歳代で5%、80歳代では10%くらいの方に見られます。

   心房細動自体はそれほど重症な不整脈ではありませんが、将来的に脳梗塞を起こしやすいことが一番の問題点です。心房細動が起こると心臓(左心房)の中に血栓(血のかたまり)ができやすくなり、この血栓が血液の流れで運ばれ、脳の血管を詰まらせて脳梗塞となります。心房細動の方はそうでない方に比べて約5倍の脳梗塞の危険性があり、重篤な後遺症を残す大きな脳梗塞になりやすいことがわかっています。同じ心房細動でも患者さんによって脳梗塞の危険性は異なり、弁膜症の人や高齢、心不全、高血圧、糖尿病、以前に脳梗塞になった人では高くなります。個々の患者さんでの脳梗塞の危険率はある程度予測でき、例えば75歳で高血圧と糖尿病がある方の場合、脳梗塞発症率は年間約6%になります。

心房細動では『脳梗塞をいかに予防するか』が重要であり、血液を固まりにくくする抗凝固薬を使用して、血栓をできにくくして脳梗塞を予防する治療を行います。脳梗塞予防の抗凝固薬としてワルファリンが主に使用されますが、昨年から新しい薬剤も発売されており、それぞれ一長一短があります。抗凝固薬治療により、脳梗塞発症を約1/3まで減らせることができます。抗凝固薬で適切かつ継続した治療を行うと、脳梗塞の危険性を大きく減らせることができるわけです。心房細動の方は、超音波検査で心臓の状態を調べて脳梗塞の危険性を評価し、個々の状態に応じた適切な脳梗塞予防の治療を行うことが必要です。

 

                 岩本内科医院   篠原 尚典

 


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