下腹部の膨らみに注意!(2013/09/02)

 

立ったときやお腹に力を入れたとき、長時間歩いたときに太ももの付け根の近くが膨らんだり、痛みや違和感が出たりしていませんか?思い当たる方は「鼠径ヘルニア」かもしれません。

鼠径ヘルニアとは一般的に「脱腸」と呼ばれ、お腹の中にある腸や体の組織の一部が、太ももの付け根の皮膚の下にとび出した状態のことをいいます。乳幼児の場合はほとんど生まれつきのものですが、成人の場合は加齢により筋肉や靭帯が弱くなることで起こることが多く、特に40代以上の男性で多い傾向があります。乳幼児、中高年ともに鼠径ヘルニア患者の80%以上が男性です。また、40代以上では職業が関係していることが指摘されており、重い物を持ち上げたり運んだりする仕事や、立ち仕事に従事する方に多く見られます。便秘症、肥満、前立腺肥大、慢性咳嗽、妊婦の方も要注意です。

症状は軽い痛みか無症状の方が多く、見た目が気になったり痛みが出始めてから来院される方がほとんどです。鼠径ヘルニアは通常柔らかく、抑えると引っ込みますが、腫れが急に固くなり、指で押しても引っ込まなくなることがあります。「嵌頓」と呼ばれ、強い痛みや吐き気を催します。嵌頓した状態で放置しておくと、腸への血流が乏しくなることで腸が腐り、腸を切る手術が必要となります。

鼠径ヘルニアの根本的な治療方法は手術以外ありません。年間約15万人の方が手術を受けています。手術の方法は、ヘルニアの袋を根もとでしばり、袋が出てきてしまう腸壁の弱くなった部分を周辺の組織(筋膜や靭帯)または人工材料(メッシュ)で補強します。最近では、腹腔鏡による手術も行っており、小さな傷で両側のヘルニアを治すことが可能となっています。入院期間も数日です。

皆さんも一度自分の下腹部をチェックください。膨らみを見つけたら早めの受診をお勧めします。

 

                    四国こどもとおとなの医療センター 外科 古川 尊子 先生

 


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