停留精巣(2013/12/02)

 

精巣は、寒い時や緊張した時には一時的に「袋」(医学的には、陰嚢といいます)より上がることがありますが、ふだんは陰嚢の中にあります。逆に、常時上がっていて陰嚢の中に触れない状態を「停留精巣」といいます。精巣は、胎児期に腎臓の近くから発生し、出生までに陰嚢へ降りてきますが、この下降のプロセスが途中で止まった状態が「停留精巣」なのです。

停留精巣をそのまま放置すると、精子を作る働きが悪くなったり、精巣に悪性腫瘍ができやすくなるといわれています。このことを防ぐため、あるいは悪性腫瘍ができた場合に少しでも早く発見できるようにするために、停留精巣に対しては精巣固定術(精巣を陰嚢まで下ろす手術)が必要です。手術の時期としては、1歳過ぎから1歳半ぐらいまでに行うのが標準的です。

典型的な停留精巣は陰嚢の少し上方(鼠径部)に触れますが、正常と停留精巣の中間ぐらいの精巣があります。すなわち、上がっていることが多いが時には陰嚢まで下りている、あるいは手で引くと簡単に下りるが手を放すとすぐに上がっていく、というケースです。このような状態を「移動性精巣」と呼びます。これに対する手術の必要性については、精巣の高さや精巣の大きさなどで判断します。

また、どこにも精巣が触れないことを「非触知精巣」といいます。この中には、元々精巣がない場合や鼠径部よりもっと上方の腹の中に精巣がある場合などがあり、専門的な検査や手術による確認が必要となります。

乳児健診で「精巣が触れない」「精巣が高い」と言われたら、専門医の診察を受けるようにしましょう。

 

                  四国こどもとおとなの医療センター 小児外科 岩村 喜信 先生

 


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