子どものうつ病(2016/09/06)

  うつは、『鬱』という漢字からも分かるように、樹が茂って暗くじめじめし、先が見えない状態を示します。つらいことや心配ごとがあると、誰でも気分が落ち込み、憂うつになりますが、しばらく経つと切実さが薄らぎ、このうつ気分は消えていきます。しかし、2週間以上も気分が落ち込んだり、何事にも興味がわかなくなったり、疲れやすく、睡眠・食欲がとれなくなることが続くと、うつ病の可能性があります。

 子どものうつ病は、以前はまれな疾患と考えられてきましたが、欧米などの研究から、児童期(12歳未満)では0.52.5%、青年期(1217歳)になると2.08.0%と大人とほぼ同じ程度に存在することが分かってきました。原因は明らかではありませんが、生物学的要因(脳内の神経伝達物質の脆弱性や遺伝)、心理社会的要因(几帳面や真面目な性格、近親者の不幸、学校での孤立、転校、進学)などさまざまな要因が複雑に関連しています。最近はベースに発達障害特性を有しているケースも増えてきました。

 子どもの多くは言語化能力がまだ未熟なため、抑うつ気分を自覚・認識し、言葉で表現することが難しく、表情、態度、身体症状などで表す場合が少なくありません。イライラ感を呈したり、身体症状(頭痛、腹痛、胸痛、動悸など)が生じたり、不登校や引きこもりといった行動上の問題が出現することもあり、しばしば怠け者やわがままに見られることもあります。

 治療については、薬物療法と精神・心理療法を併用します。生活リズムを保ちながら、負荷を軽減し、休ませる工夫が必要となります。

 またうつと躁が混在し、情緒不安定な混乱状態を呈する子どもの場合、躁うつ病の可能性があります。うつ病と治療が異なるので注意が必要です。

 

四国こどもとおとなの医療センター 児童精神科医長   中土井 芳弘


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