深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症(2017/09/04)

  『エコノミークラス症候群』という名前をご存じですか?飛行機などの狭い席で長時間同じ姿勢でいると、足の血のめぐりが悪くなることで血の塊(血栓)ができ、それが血液の流れに乗って胸に運ばれ、肺の血管を詰めてしまう病気です。医学用語では『深部静脈血栓症』ならびに『肺血栓塞栓症』と呼ばれます。程度によっては突然命を落とすこともあるため、注意すべき病気です。多くは片一方の足が腫れ、時に赤くなったり痛みを感じたりします。肺の血管を詰めると、胸の痛み、息苦しさ、フラフラ感や意識を失うこともあります。血液検査や超音波検査、CT検査などで調べます。対策は大きく分けて2つあります。

 1つ目は血栓の通り道に網を置き、大きな血栓が胸に届かないようにする予防法です。カテーテルという細い管を使って通常15分程度で簡便に行え、不要になれば体から抜くことも可能です。

 2つ目は、できた血栓を溶かす治療法です。注射剤と内服剤があります。出血が問題となることがありますが、最近は安全で効果的な新薬も多く登場していますので、状況に応じた治療の選択肢が拡がっています。ほか、重症例ではカテーテル治療や手術を行うこともあります。

 ところでエコノミークラス症候群は、なにもエコノミークラスだけではなく、たとえファーストクラスであっても起こります。旅行中など、長時間同じ姿勢でいる必要のある時などは、こまめな水分補給や、時々つま先を上げ下げしてふくらはぎの筋肉を動かすと良いでしょう。また起こしやすい背景や病気があり、足・おなかの手術後や、がんなどが挙げられます。できるだけ早く、特に血栓が足にとどまっているうちに治療を行う必要がありますので、「そうかな?」と思った場合は速やかに受診するようにしてください。

 

 

四国こどもとおとなの医療センター 循環器内科   仁木 敏之


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