小児の急性胃腸炎に対する経口補液療法(2017/12/02)

 毎年、冬季になるとノロウイルスやロタウイルスなどによる急性胃腸炎が流行し、お子さんが突然に嘔吐を繰り返して病院を受診することもあるかと思います。急性胃腸炎の主な症状は発熱、嘔吐と下痢ですが、この嘔吐と下痢が持続する場合には脱水症状を予防することが重要です。今回お話しする経口補液療法(ORTOral Rehydration Therapy)とは、市販されている経口補水液(オーエスワン®など)を用いて嘔吐や下痢により喪失した水分や電解質を速やかに補うための手段です。

 経口補水液はナトリウム(濃度は3550mEq/L)などの電解質と糖質が含まれているため、これらを補充することができます。一方、糖分の高いジュース類や炭酸飲料などは下痢を悪化させるおそれがありますので避けてください。

 ORTは急性胃腸炎による中等症以下の脱水症を認める場合に自宅で行いますが、病院を受診した際には(救急)外来の待合室でも実施することがあります。

 ORTの大きなメリットは急性胃腸炎の発症早期から自宅でも開始できることであり、その効果は病院で実施する点滴による補液と同等ともいわれています。具体的なORTの実施方法ですが、小さじ1杯=5mLを1回分として数分毎に投与します。この時、本人が欲しがっても一気に大量に与えてしまうとさらに嘔吐を誘発してしまうのでご注意ください。その後、ゆっくりと嘔気や嘔吐が落ち着いてきたら、経口補水液の1回量を少しずつ増量して間隔を空けていってください。

 以上、急性胃腸炎に対するORTのポイントを簡単に述べましたが、小児における嘔吐の原因には他にも腸重積症、頭蓋内病変、尿路感染症、心筋炎や代謝性疾患などさまざまな原因もありますので、まずはかかりつけの小児科の先生に相談していただくのがよいでしょう。

 

 

 

四国こどもとおとなの医療センター 小児感染症内科   岡田 隆文

 


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