口の健康について(2019/07/01)

 高齢化に伴い、徐々に体が弱り始めます。しかし、ある日突然介護が必要になるわけではありません。自立と介護が必要となるまでの、中間的な状態があります。これを『虚弱』状態を意味する英語のフレイルティから『フレイル』と呼びます。

 フレイル状態になるのを予防する取り組みでは、社会性が大事だといわれます。一人で運動するより、家族や仲間と運動する方が効果的です。一人で食事するよりも、誰かと一緒に食事する方が効果があります。

 栄養も大事ですが、とりわけ『口の健康』が重要です。『人は口から衰える』という言葉があります。高齢者が肺炎で入院すると、食事が誤って気管に入る(誤嚥(ごえん))のを防ぐために入れ歯が外されます。これが長く続くと、口元がたるむ、(*口腔(こうくう)内が乾燥する、舌も動きにくくなる、ますます呑み込みができにくくなります。

 少し極端な例を出しましたが、口の健康、口腔機能は、健康で長生きするためには大変重要なことです。この口腔機能の低下を『オーラルフレイル』と呼びます。

 オーラルフレイルに対する取り組みで、最近話題になっているのが『あいうべ体操』です。福岡市の今井医師が提唱したもので、大きく口を開けて「あ」「い」「う」といって、最後に「べ」と舌を前に突き出します。声に出す必要はありませんが、みんなで声を出す体操も楽しいかもしれません。

 口の周りの筋肉や舌の運動を行うのが目的ですから『体操』と呼びます。これを1回10セット、1日3回行うと効果があります。小学校で実践したら、インフルエンザによる学級閉鎖が減ったという報告もあります。(手洗いやうがいは当然ですが)

 *『口腔』の読み方は正しくは『こうこう』ですが、医学の世界では『こうくう』と言います。

 

                          善通寺診療所 所長   藤原 高明


一覧に戻る

Copyright (C) 2001-2006 Nakatado gun & Zentsuji city Medical Association. All Rights Reserved