お酒と食道がんとアルデヒド(2019/08/01)

  夏の暑い日に汗をかいた後の一杯のビールは、愛飲家にとって何ものにも代えられない楽しみです。しかし、このおいしい飲み物に含まれるアルコールががんの原因となることがわかっています。ビールに限らず、清酒・焼酎・梅酒・ウイスキーなどアルコールを含む飲料はすべてです。

 アルコールは乳がん、大腸がん、肝臓がん、食道がんの原因になるといわれ、また飲酒量が多ければ多いほど、がんの危険も高くなります。最近、食道がんがアルコールの分解産物である*アルデヒドに起因することが明らかになってきました。

 お酒を飲むとアルコールは、胃や小腸で吸収され肝臓に運ばれて酵素の作用でアルデヒドに分解されます。アルデヒドは強い毒性があり、飲酒で顔が赤くなったり、動悸や頭痛を起こすのはこの毒性によります。さらに発がん作用もあります。

 有害なアルデヒドは肝臓のアルデヒド脱水素酵素によって無害な酢酸(お酢の成分)に分解されますが、酒を飲み過ぎるとアルデヒドが分解されないで血中に残り、悪酔いやがんの原因となります。さらに喫煙によってがん化のリスクは数十倍になります。

 アルデヒド脱水素酵素の活性は人種によって異なり、白人や黒人は活性が高く酒に強いのですが、黄色人種は活性が弱く、日本人の約半数は酒に弱い体質です。

 お酒は、日々の楽しみと潤いや活力を与えてくれる飲み物ですが、適度に飲めば『百薬の長』、飲み過ぎると『毒薬』となります。一日ビール2本または清酒なら2合以内にすること、体質的に弱い人は無理に飲まないことも大切です。

 

 *正確には、アセトアルデヒドです。

 

                              吉田医院   吉田 翼


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