〜 前立腺肥大症について 〜(2006/05/01)

 前立腺肥大症は、かつては「年のせいだから仕方がない」と考えられることが多かったようです。実際、この病気は六十歳以上の男性の50%、八十歳以上の男性の80%にあると言われ、現在では生活の質(QOL)に関わる重要な病気の一つです。
 前立腺は男性の膀胱の出口近くの尿の通り道である尿道の周囲を取り巻くようにあり、これが年齢と共に大きく腫れてきます。この腫れた前立腺が尿道を圧迫したり、膀胱の出口を刺激して、いろいろな問題を起こすわけです。
 その症状としては、初期の段階では夜に何度も尿に起きるという夜間頻尿が多く、昼間でも頻尿や尿が我慢しにくいという尿意切迫感を訴える方も多いようです。
 進行すれば、尿の勢いが悪くなり、尿が残った感じがするという残尿感が出てきます。これがひどくなると、尿が完全に詰まって出なくなる尿閉という状態に陥ります。尿閉が長く続けば、腎臓の働きが悪くなる腎不全という状態にまでなる可能性があり、注意が必要です。診断は、専門医で比較的簡単な検査で可能です。
 治療は、症状の程度や前立腺の大きさなどで変わりますが、軽症から中等症程度の場合であれば、α遮断薬という非常に有効な薬があります。この薬の効果が悪い場合や、重症の肥大症においては、場合によって手術を行います。
 手術には、お腹を切る手術(開腹術)とお腹を切らずに尿道から内視鏡を挿入する手術(経尿道的手術)があります。どちらの手術も6日から10日程度の入院で可能です。
 前立腺肥大症は頻度の高い病気でQOLに大きく影響します。「年のせいだ」と諦めずに、積極的に受診されることをお勧めします。


国立病院機構善通寺病院
泌尿器科医長 横田 欣也

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