美しく老いる(2007/08/01)

 今や日本は平均寿命でみる限り世界一の長寿国となり、私たちにとっては喜ばしいことである。しかし、理想的な長寿は元気で長生きすることであるが、現実は厳しく、寝たきり状態になったり、認知症や身体障害などで、常に介護を必要とする多くの高齢者がいる。一方、後期高齢者(75歳以上)でも、まだまだ若々しく社会に貢献している人も少なくないのが現状である。
 不老不死は古くから人類最大の願いであるが、人間が動物である以上、死は避けられない。しかし、老化を予防し、心身ともに健全で自立した健康長寿の老後を送ることは不可能ではない。近年、抗加齢医学が注目され、老化の進行を人為的に抑制し、美しく老いる試みが進んでいる。その具体的な方法としては、食事(カロリー)制限と適度な運動の継続が有効と考えられている。
 健康で長生きするためには、まず、体調を崩さない注意と生活習慣病といった慢性疾患を抱え込まないことである。慢性病は長い年月を経て現れるもので、一度罹ると、進歩した現代医療でも完治は難しく、老化を早める結果となる。従って、健康な時から将来のために生活習慣を見直し、適度の運動を続ける心掛けと努力が何よりも大切で、これは自己の責任においてのみ達成されるものである。
 転ばぬ先の杖ではないが、人間の体は使わなければ衰えるしかなく、人生の早い時期から老後の健康維持を目指して、人それぞれの方法で努力してほしい。健康保健薬や医者に頼るばかりでなく、日常生活の中で体を動かし、頭を働かす健康志向が必要である。「楽あれば苦あり」、「長生きも楽ではない」といった先人の言葉の裏には、“美しく老いる”ためのヒントが秘められているように思う。


岩本内科医院 岩本 和幸

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