血管障害を防ぐことこそが糖尿病の治療目的(2009/02/01)

 


 昔から「人は血管とともに老いる」といわれてきました。からだは、膨大な数の細胞が集まってできていますが、一つひとつの細胞が必要としている酸素や栄養素は、血管によって送り届けられています。ですから血液の供給路である血管は、いわば“からだのライフライン”。ライフラインに障害が起こるとさまざまな臓器障害が起こってきます。人間誰でも年とともに血管の老化現象が進行します。それは避けようのないことです。しかし、同じ年齢でも周囲から「いつまでもお若いですね」といわれる人もいれば、その反対の人もいるように、血管も、実年齢より若い状態の人がいる一方で、老化がより進んでしまっている人もいます。血管年齢に個人差が生じる理由は?実は、「糖尿病性血管障害」が、その答えの一つです。糖尿病という病気は血糖値が高いことをもって診断される病気ですが、実は、単に「血糖値が高くなる病気」ではなく血管障害の非常に重大な危険因子です。糖尿病により血管障害が進行すると神経障害、網膜症、腎症、壊疽、脳卒中、虚血性心疾患(頭文字をとって:しめじとえのき)などの重篤な疾患を合併してきます。血管障害を起こさない、たとえ起きてしまっても重篤化しないようにする−それが糖尿病治療の目的です。糖尿病の治療で血糖値を下げることは「血管障害を防ぐ」ための一つの手段ということです。そして、血糖値を下げること以外にも、血管障害を防ぐためには高血圧症や脂質異常症(高脂血症)などを、きちんと治療して行くことも大切です。そのためには、腹八分、間食を控える、塩分制限などの食事療法を継続すること、運動を習慣化することが基本となります。


 


独立行政法人国立病院機構 善通寺病院


内科医師  吉田 和矢


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