母乳とくすり(2009/05/01)

 


 生まれたとき3000gの赤ちゃんは約1か月で4000g程度にどんどん大きくなり、赤ちゃんの成長には沢山の栄養が必要です。この時期の哺乳量は個人差が大きいですが一日450mL程度、1か月では15Lを飲んでいます。成人の一日牛乳消費量が150mLですから赤ちゃんはすごい量を飲み干しています。


 30年前、小さく生まれた赤ちゃんたちでは人工乳より母乳で育てる方が死亡が少なく、また発展途上国でも同様に母乳で赤ちゃんを育てる方が死亡や感染が少ないことから、先進国においても母乳の良さが見直された経緯があります。


 母乳は授乳する母親にとっても利点が大きく、「抱っこホルモン」が授乳ごとに分泌されて母子相互の愛着形成に働いたり、母親の乳ガン、卵巣ガン、子宮体がんのリスクを減らしたり、母親の体重を減らす効果があることがわかっています。


 社会にとっても、家庭にとっても人工乳に比べ安価であることは大きなメリットです。さらに、病気の予防の効果からみた上ではまさに「くすり」として働き、その効果を換算すると母乳100mLが1000円程度の価値になると換算する人もいます。


 そんなお母さんが母乳を飲ませているときに心配されるのがお母さんの服薬です。実際のところ母乳を中止しなければならないくすりはどれくらいあるのでしょうか?妊娠と薬情報センターではそのホームページで「授乳中に使用してはいけない薬剤の代表例」を並べています。その薬は抗ガン剤、免疫抑制剤、麻薬などの約30に限定されます。お母さんが一番使用される頻度の高い解熱鎮痛剤は安全です。お母さんが母乳を続ける上でも、病気や症状が改善することは大切な要素です。心配な際は小児科、産婦人科の専門家に相談することはお母さんや赤ちゃんにとって大きなメリットになるでしょう。


 


国立病院機構香川小児病院


小児科(妊娠と薬情報事業担当)


河田 興


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