大人の脱腸について(2010/12/01)

 腸のヘルニア(脱腸)は、腸が余計な隙間にはみ出てくる病気です。加齢などでお腹の壁の一部が弱ってゆるくなると、ここからお腹の壁の裏打ちをしている腹膜が外に向かって風船のように伸び出してくることがあります。余計な隙間とは、この風船のなかです。下腹部のヘルニアには、ソケイヘルニア、大腿ヘルニア、閉鎖孔ヘルニアなど、出てくる場所によっていろいろあります。お腹に力をいれると、この腹膜の袋の中に腸や卵巣や大網などの臓器が脱出してきて膨らみます。横になると自然にお腹の中にもどって膨らみが消える場合や、手で押し込まないと戻らない場合もあります。出ているときは痛みや不快感がありますが、戻っていれば症状がないため、認知症などで本人が全く気にしていないこともあります。隠したがる場所ですが、入浴時などに介護者がこれを念頭において観察することも重要です。


 脱腸になれば、様子を見ていても、次第に袋が大きくなり、大きく脱出するようになるだけです。今のところ薬では治りません。余計な袋を取り除いて、袋が伸び出てきたお腹の壁の隙間をふさいで、また袋が出てこないように補強する手術が必要です。補強の仕方によっていろいろな手術法があります。


 袋の口が狭い場合や、大量に脱出した場合、押し込もうとしても戻らなくなることがあります。腸が脱出したままでは、袋の中で絞められて通らなくなるため腸閉塞をおこします。また腸管の血流が悪くなり、この状態が長く続くと、腸が腐ってやぶれてしまい、腹膜炎をおこすことになります。どうしても戻らなくなったら、できるだけ早く病院を受診する必要があります。出たままで一晩もおいておくことは危険です。出入り自由な場合はあわてる必要はありませんが、戻りにくくなっていれば早めの手術が必要です。


 


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善通寺病院 外科  田渕 寛


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