治療可能な認知症(2011/08/01)

 アルツハイマー病に代表される認知症は、一般的には治療困難なものが多いのですが、今回は、外科的に治療可能なものを二つ紹介します。


1 慢性硬膜下血腫


 高齢者で脳萎縮の強い方にみられます。軽い頭部外傷でも脳のくも膜が損傷されると、髄液が硬膜下腔に溜まり、そこに徐々に血腫ができ、脳を圧迫し、頭痛・手足のまひ・認知症などの症状が起こってきます。CT、MRIにて容易に診断できます。放っておくと死亡することもありますが、頭に小さな穴をあけ、血腫を抜き出すと、劇的に症状がよくなります。


2 正常圧水頭症


 脳・脊髄を満たす髄液腔の圧が高くないにもかかわらず髄液の吸収に障害があるため、髄液量が過剰になり、歩行障害・認知症・尿失禁などの症状が現れます。この正常圧水頭症には、くも膜下出血・頭部外傷・髄膜炎などの後に起こる二次性正常圧水頭症と原因不明の特発性正常圧水頭症があります。


 後者は、特に高齢者の認知症では注意したい疾患です。認知症とともに、脚を開き小幅でパタパタと歩く歩き方も特徴です。CT、MRIにて特発性正常圧水頭症が疑われた場合、腰椎穿刺にて髄液を少し排出し、症状改善がみられれば髄液短絡術を行います。これは髄液を抜くポンプ付きのチューブを皮膚の下に通し、髄液を腹腔に誘導し吸収させる手術です。全例がうまくいくわけではありませんが、かなり有効です。


  その他、脳腫瘍・脳梗塞の中にも外科的治療が有効なものがあり、また内科的疾患でも甲状腺機能低下症・ビタミンB1欠乏症・高カルシウム血症などは、治療により症状改善が期待できます。認知症が疑われる場合、まず、かかりつけ医に相談し、専門医への紹介も必要と思われます。


 


行天クリニック  行天 徹矢


一覧に戻る

Copyright (C) 2001-2006 Nakatado gun & Zentsuji city Medical Association. All Rights Reserved