インフルエンザ脳症について(2014/12/01)

  インフルエンザ脳症とは、インフルエンザの感染により急激に発症し、脳の障害をもたらし、時には諸臓器も障害を受ける重篤な疾患です。

インフルエンザの感染が引き金となりますが、ウィルスが直接脳に感染するのではなく、感染によって産生されたサイトカイン(一種のたんぱく質)等によって起こる、と考えれています。

好発年齢(疾患が発生しやすい年齢)は1〜5歳、平成21〜22年に流行した新型インフルエンザでは5〜10歳が中心でした。

症状は、インフルエンザの発熱に伴い、数時間から一日以内にけいれん、意味不明な言動、意識障害などの神経症状が現れます。

具体的な異常言動、異常行動の例としては、

・両親がわからない、いない人がいると言う。

・自分の手を噛むなど、食べ物であるかどうかの区別ができない。

・アニメのキャラクター、象、ライオンなどが見えるなどの幻視、幻覚的訴えをする。

・意味不明な言葉を発する、ろれつが回らない。

・おびえ、恐怖の表情が表れる、恐怖感を訴える。

・急に怒りだす、大声で歌いだす。

診断は意識障害のレベルと頭部CTスキャン、MRI,脳波等によって診断し

ます。

 治療の方法は、まず全身状態の改善、特に酸素投与、脱水、ショック状態の改善をしっかり行います。また、けいれんを起こしていることが多いので、これをしっかり止めます。次に脳症の治療として、抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ等)の投与、ステロイドパルス療法、γ−グロブリンの大量療法等を行います。

 10年前には、この疾患により約30%の子どもが死亡し、25%に後遺症が残っていました。最近では年間約100〜300人が発症し、そのうち死亡は約8%と、改善しつつあります。

 

          中島医院 中島 雄作


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