逆流性食道炎(2016/10/01)

  逆流性食道炎は、胃酸を主とする胃内容物が食道へ逆流することにより、食道粘膜の傷害を引き起こす疾患です。従来、日本人は加齢やヘリコバクターピロリ菌(以下ピロリ菌)感染による胃粘膜萎縮の進展により胃酸分泌が低下し、特に高齢者では萎縮性胃炎が多いため、欧米と比較し逆流性食道炎の有病率は低いとされてきました。

 しかし近年、衛生環境の向上によるピロリ菌感染率の低下や食生活の欧米化などに伴い、日本人の胃酸分泌量が増加し、逆流性食道炎の有病率は上昇しています。

 逆流性食道炎の主な自覚症状は胸やけと呑酸です。日本人では軽症の逆流性食道炎や食道粘膜傷害はないが、胸やけなどの症状のみを訴えるNERD(非びらん性胃食道逆流症)とよばれる疾患が大部分を占めています。胃酸の逆流を原因とする症状は患者さんのQOL(生活の質)を低下させることが多く、昨年改定された逆流性食道炎のガイドラインでは、逆流性食道患者の治療では症状を緩和させ、QOLを向上させることがもっとも重要とされています。そこで現在、逆流性食道炎患者の症状を正しく判断し、治療に活かす目的でさまざまな問診票が開発され、ガイドラインでも使用を提案されています。

 治療はプロトンポンプ阻害薬という胃酸抑制薬が第一選択となっています。それでも効果がない時は、消化管運動改善薬などを組み合わせて治療がされます。逆流性食道炎は繰り返す病気であり、長期間治療薬を内服せざるを得ないケースが多くあります。その際、治療薬選択で最も注意すべき点は高い症状改善効果が確認され、かつ長期間内服しても安全性が証明されている内服薬を選択することが重要であり、安易に新しい長期成績の分かっていない薬剤は使用しないほうがよいのではと考えています。

 

石原消化器内科クリニック   石原 慎一


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