入浴熱中症 〜長風呂は危険〜(2022/03/01)

 入浴は、日本人にとって日々の暮らしの中で楽しみのひと時です。ところが、入浴中に高齢者が浴槽内で死亡する入浴死亡事故が多いことをご存じでしょうか。その死亡者数は、年間5千人以上と推測されます。この特徴は、冬期(11月〜3月)に集中的に多発することから、寒さと関連があると考えられてきました。

 寒い脱衣所から温かい湯の中に入ると、血圧が急激に変動して心臓発作や脳卒中を起こすヒートショックが原因とされていました。しかし、その後の研究により、身体を温かい湯に長時間浸かることで体温が上昇し、熱中症を起こして死亡する入浴熱中症が多いことがわかってきました。全身を42℃の湯に浸すと10分で体温は38℃に上昇し、26分で40℃に達し熱中症となり意識を失って浴槽内で死亡します。

 高齢者は熱中症になりやすい上に、湯ざめしないようにと長時間入浴する習慣があるので非常に危険です。また、身体が湯の中で温まる心地良さがこの危険性に気づきにくくしているようです。

 近年の住宅には、お風呂があり給湯設備も良く整っていて、いつ何時でも蛇口をひねるだけで温かい湯が出るので、独居の高齢者でも簡単に入浴ができます。さらに湯水がさめないように追い炊き機能などもついています。この便利さも入浴熱中症の要因となっています。

 入浴熱中症の怖いところは、元気で自立している高齢者が突然に死亡することです。くれぐれも長風呂をしないよう『入浴時間は10分以内』を心がけましょう。

 

                                  吉田医院   吉田 翼


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